ヒトクローンES細胞報道に憶う

 5月15日付米科学誌セルに発表された、ヒトクローンES細胞が樹立されたとの論文について、疑義がもちあがっている。
ヒトクローンES細胞と説明された写真が受精卵から作製された通常のES細胞と3カ所同じであったことが判明した。この点、論文の責任著者も認めており、大きな問題となっている。

 以前、韓国の黄教授も同様の報告をしており、後に捏造と判明している。これまでヒトクローン胚によるES細胞樹立はマウスと異なり困難であるとされていたが、米オレゴン健康科学大の立花博士が初めてヒトでES細胞を樹立したことで話題となった。

 真偽のほどは明らかではないが、ヒトクローンES細胞の樹立は、今後の再生医療を考える上で極めて重要な知見であり、論文の信憑性を揺るがす事態となったことは誠に残念である。            この研究報告の筆頭著者が日本人であることは遺憾であるが、偽りの報告は許されるものではない。最近の報道にみられるように、相次ぐ論文の捏造は科学者としてあるまじき行為である。

 

《5/24 朝日新聞》

(吉村やすのり)

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