AIによる認知症の早期発見

 厚生労働省の研究班によれば、認知症の高齢者は2025年には471万人、2040年には584万人になると推計しています。このうち、6~7割を占めるとされるアルツハイマー病の新薬で、昨年12月に治療が始まったレカネマブは、MCIを含む早期の患者が投与対象になります。より早い段階から使った方が効果は高いとのデータも示されています。

 太陽生命少子高齢社会研究所のアンケート調査によれば、認知症の当事者に対し、同居する家族があの頃から認知症だったかもしれないと感じた時期から、実際に診断されるまでにかかった期間は、平均で16.2か月でした。家族が医療機関に受診させようと思ってから、実際に受診させるまでの期間でみると、11.6か月かかっています。
 日常的な動作から認知症のリスクを見つけるためのAIによる技術開発が進んでいます。データ解析支援のFRONTEOは慶應義塾大学と組み、医師らと検査を受ける人が交わす5~10分程度の日常会話をもとに、認知症の疑いがあるかどうかを人工知能(AI)が判別するシステムを開発しています。会話を録音し、文字化したデータをAIに学習させ、基礎的な検証では9割程度の精度で見分けられるとしています。
 日々の生活の中で、認知症の兆候を探ろうという動きもあります。NTTデータは、自動車の運転の様子をもとに、脳の認知機能の低下を調べるAI技術の実用化に取り組んでいます。早期発見・気づきには、技術開発はもちろん、認知症に対する負のイメージを払拭し、正しい理解を深めていく社会全体の取り組みが欠かせません。

(2024年10月18日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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