iPS細胞研究の進展

 iPS細胞は、2006年に京都大学の山中伸弥教授がマウスの細胞を使って作製に成功し、その後、様々な医療応用の研究開発が進んでいます。既に実用化に向けた動きも進んでおり、2025年4月には大阪大学スタートアップのクオリプスが、心筋シートの製造販売承認を厚生労働省に申請しました。また住友ファーマは、2025年8月にパーキンソン病に対する製品の承認を厚生労働省に申請しており、2026年には審査結果が公表される可能性があります。

 クオリプスなど従来のiPS細胞由来の製品は、平面のシャーレなどで培養したiPS細胞をベースにした開発ですが、近年注目を集めるのが3次元的な立体培養です。オルガノイドとも呼ばれ、実際の臓器や組織のような立体構造を持つのが特徴です。立体培養の手法は様々な研究機関や企業が進めていますが、培養に動物由来の成分を使ったゲルが必要となるほか、同じ立体構造を再現するのが難しく、オルガノイド製品を医療応用するうえでの課題となっていました。

 大阪大学の研究チームは、外科手術の止血促進剤などで臨床応用されている生体材料のフィブリンゲルに注目しています。フィブリンゲルと多能性幹細胞を培養する土台に細胞と接着する性質をもつラミニン511と組み合わせた新たなフィブリノゲンにキメラたんぱく質を作製しました。iPS細胞の立体培養の土台に、このキメラたんぱく質を使ったところ、複数の種類の細胞に分化する能力を持ちながら、長期間安定して増殖することを確認しています。

 米調査会社によれば、iPS細胞を使った再生医療製品や創薬研究などの市場規模は2034年に47億4,000万ドル(約7,500億円)と2024年の2.6倍の規模まで拡大すると予測されています。iPS細胞を使った技術は、新しい医薬品候補の安全性などを調べる創薬研究、新たな診断薬開発、研究に必要な培地、培養試薬といった周辺技術の開発も活発化しています。

(2026年1月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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