がん治療の変遷

 がん治療は近年、外来での治療が増えています。しかも外来での通院時間も短くなっています。2002年にがん治療で入院する患者は13万9,000人、外来患者は11万9,000人でした。2023年は入院患者10万6,100人に対し、外来患者は18万6,400人となり、外来が入院を大きく上回っています。

 がん治療では副作用などの対応が必要だったため、以前は入院治療が中心でした。しかし近年は、抗体医薬と呼ばれるバイオ医薬品の開発が進み、副作用を抑えながら治療ができる薬剤の選択肢が広がったことで通院治療にシフトしています。

 問題は抗体医薬の多くが点滴による静脈投与が必要になることです。月に数度、抗がん剤の投与を受けるために丸1日かけて治療を受けます。患者が自分らしく過ごすための貴重な時間を失うことから、時間毒性とも呼ばれています。新しいがん治療薬により、生存期間はこれからも延びてきています。今後は生活の質を維持しながら長い間治療できるかという視点も大切になってきています。

(2026年8月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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