加速する少子化への対応

 日本で最後に200万人台の出生数を記録した1974年の合計特殊出生率は2.05で、人口置換水準の2.07を下回りました。2016年以降は9年連続で低下を続けており、2024年は1.15と史上最低を記録しました。2025年の人口動態統計では出生数より死亡数の方が多く、全体として約90万人と、政令指定都市1つ分ほどの人口が減少しています。

 日本の将来推計人口によれば、2056年には人口1億人割れが予想されています。さらに2088年には7,100万人台と、1945年の総人口約7,200万人も下回り、戦後80年の振り出しに戻ってしまいます。予測の最終年の2120年では、総人口が5,000万人割れとなり、明治時代の人口に戻ることになります。

 少子高齢化社会における国家の持続可能性のキーポイントは、総人口よりも非生産人口と生産人口の比率です。生産年齢人口(15~64歳)に対する高齢者人口(65歳以上)の比率である老年人口指数は、先ほどの国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口では、2025年では0.500であり、生産年齢人口2人で1人の高齢者を支えている計算になります。2045年には0.676に上昇します。生産年齢人口1人当たりの税や社会保険料を35%に引き上げるか、高齢者への社会保障給付を3割近く削減しなければ、生産と扶養のバランスが崩れ経済社会が維持できない事になってしまいます。加速する少子化を止めることはできない現状を考えれば、もはや少子化対策だけでは人口減少に対応することはできません。

 日本の高齢化の特徴は、少子化と長寿化が同時に起きている点です。人生百年時代と言われ、寿命は20~30年も延びたにもかかわらず、退職年齢は5~10歳しか延びていません。出生対策では、子どもが生産年齢に達するまでに時間を要します。75歳定年制を導入し、老年人口指数の分子にあたる高齢者が退職時期を10年先送りすれば、直ちに老年人口指数の分子が減るばかりでなく、分母の生産年齢人口が実質的に増えることになります。

 非正規やパートでしか働いていない女性が正規社員として労働をより多く供給すれば、分母の実質はさらに増えます。寿命が延びた分を老後に長く働く代わりに、子育て期に3~5年程度の長期の育児休暇を取得して男性がより育児に参加すれば、高齢者・女性・男性の全てで超少子化・高齢化社会の日本の経済社会を持続させる新たな1億総活躍プランが実現できます。

(2026年4月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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