厚生労働省は、医師の偏在是正のため、2026年度から診療所が多い地域での新規開業は事前の届け出を求め一定の制限を設けます。診療所の開業制限は今回が初めてです。しかし、その内容は日本と同様に公的医療保険制度をとる欧州諸国と比べて緩やかです。ドイツは、地区ごとに医師数の基準を設け、医師が多い地区での新規開業や承継に制限を設けています。フランスは、診療科ごとに研修医の定数を定めています。原則、研修で選んだ診療科しか標榜できません。
診療科や病院・診療所間の偏りを改善するには、規制とインセンティブの両輪で進める必要があります。インセンティブとして、国は地域で働く医師向けの手当を新たに作ります。規制的なアプローチは、これまで医学部の地域枠など若手医師向けの是正策が中心でしたが、開業を巡る規制の強化も重要な政策に位置付ける必要があります。
これまで政治的影響力の強い日本医師会などへの配慮から、できるだけ多くの額の診療報酬を確保し、外来中心の診療所に手厚く配分してきました。勤務の負担感や抱えるリスクが大きい入院医療を担う医師の確保は、一人ひとりの責任感や使命感に頼ってきました。病院の機能集約も効率化を実現するために必要となります。ときに地域住民の利便性が低下することがあっても、持続可能な医療のためには避けては通れない選択となります。

(2026年4月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





