消費税減税の懸念
消費税は1989年に税率3%で導入され、約30年間かけて10%(軽減税率は8%)まで引き上げてきました。国民に広く負担を求める税は反発を招きやすく、ときに政権の命運すら左右してきました。高市首相は、その消費税の減税を年間5兆円規模に上る財源の確保を後回しにして決断しました。
実際に食料品の消費税が1%に引き下げられたら、消費者側が得る恩恵は、金額でみれば消費額が多い富裕層ほど大きくなります。しかし、家計全体に占める食料品の割合は低所得層のほうが多い傾向があるため、家計全体に対する恩恵の割合は、低所得層のほうが高くなると思われます。
企業は納める消費税が減るので、その分値下げする余地は生まれ、消費者の視線や政策の趣旨を踏まえて、値下げする企業もみられるでしょう。しかし、値下げが強制されるわけではありません。原材料費や人件費が上がる状況下でも製品の値上げを我慢していた企業の中には、減税分の一部をそれに充てようという動きが出る可能性があります。
消費減税に合わせ、働く中低所得者向けに、食料品の消費税1%分の税収に相当する年6000億円の給付も2年間行います。消費減税と給付を行えば、年5兆円もの財源を失い、大きな穴があくことになります。社会保障給付の財源確保に支障を来しかねません

(2026年7月31日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)





