朝日新聞の調査によれば、全国に300以上ある2次医療圏ごとに一般病床の利用率をみると、7割に満たない医療圏の割合が2024年は35%を超え、20年前の5倍に増えています。2次医療圏とは、複数の市町村をまとめて都道府県が設定した医療の地域区分で、救急や入院など一般的な医療であれば、住民が圏外に出ることなく身近な場所で受けられるように体制を整えています。

人口減に伴って患者が減ったことや、入院日数が短くなっていることが背景にあります。2020年に新型コロナウイルスが流行し、そのほかの病気で手術が先送りされたり受診控えがあったりしたことも利用率の低下につながっています。医療技術の進歩により、がんでは長期間の入院が必要になる外科手術よりも、通院しながら放射線や抗がん剤などの治療を受けることが一般的になってきています。
病床利用率が低い病院経営は厳しくなります。総務省のガイドラインでは、70%未満になると特に低水準とされています。人口がさらに減る2040年に向けて医療を効率化しようと、厚生労働省は新たな地域医療構想をまとめるよう都道府県に求めています。人口20万人以下の医療圏では、基本的な医療の全てには対応できなくなるとして、他の医療圏と一体となることを促しています。
かつては病床は力と言われたこともあり、病院は病床が多いほど経営も安定していました。人口減少が進む今は、患者を集められなければ、病院を維持できません。地域で必要とされている医療を提供するために、高度な医療を行う病院とリハビリや長期療養を行う病院など、病院ごとに役割を明確化していく必要があります。人口が激減する中で、医療圏の見直しの議論は避けて通れません。過疎地の医療圏では、地域で確保すべき医療は何かという防御ラインを決め、それを維持する方策の知恵を絞るべきです。
(2026年8月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)







