線虫による早期がん発見

 九州大学のチ-ムが、線虫という小さな実験用動物に人の尿のにおいをかがせ、がんの有無を精度よく判定できることを発表しています。線虫は回虫などの仲間で、体長は約1ミリメ-トルで、ウナギのような形をしています。線虫は臭いをかぎ分ける能力が高く、その臭覚の鋭さを利用しています。線虫がいる容器に人の尿を1滴入れ、線虫の動きを観察し、がん患者の尿には線虫が寄り付き、健常者の尿からは避けるように離れていきます。
 242人の尿を用いて反応を調べたところ、大腸や胃、乳房のがん患者24人中23人を陽性だと判断されました。一方、健常者218人では、207人が陰性と判断されました。がん患者を見つけられる確率は95.8%で、腫瘍マ-カ-より精度が高いとされています。がん患者の汗や呼気、尿などのにおいが、健常者と異なっているといわれています。体内でがん細胞が活動したり、死滅したりする際に出す物質が通常の細胞と異なっていることから、線虫が臭いを嗅ぎ分けることができるとされています。九大の成果は、高い検査精度だけではなく、費用が安く手法が簡単な点で、注目を集めています。

(2015年4月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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