「保育園作れよ」に憶う

 保育園に入れず「保育園落ちた日本死ね」と国に不満をぶつけた匿名ブログの波紋が広がり、1億総活躍社会や少子化と言うなら、保育園作れよと、国会前での抗議や、署名活動などを通じて保育制度の充実を求める動きがみられました。ブログは「保育園落ちた日本死ね!!!」の題で、2月中旬に投稿されました。3月になって、保活で苦労する親などが国会前で抗議活動をし、保育制度の充実を求める27千人余分の署名が塩崎恭久厚生労働大臣に提出されました。こうした一連の動きは、これまでの子ども・子育て支援等に対する不満のあらわれとも思えます。
 昨年春より、待機児童解消などを目指す「子ども・子育て支援新制度」が始まりました。これまでも保育所の整備や仕事と子育ての両立支援を含めた少子化対策を始め、複数のプランや法律を作ってきましたが、必ずしも効果が出ているとはいえない状況にあります。特に待機児童は、子どもがいる共働き家庭だけの問題だと見られてきました。そこだけ手厚くすると不公平であるとの声があがり、これまで強力な政策を打ち出せないこともありました。しかし、現在では非正規職員が増え、共働きでないと生活できない家庭も増えており、待機児童になった時の深刻さが増したことも影響しています。国は、平成29年度末までに50万人の保育の受け皿を整備する方針を出しています。
 日本では、保育所の増設が優先され、保育の質が置き去りにされるという不安も出てきています。海外では、保育園の質をチェックする仕組みを持っている国もあります。スウェーデンでは、保育所に入りたいという希望が出されたら、自治体はおおよそ3カ月以内に保育を提供する義務があります。こうしたチェック機構を持たない日本では、親が子どもの安全や権利についての意識を高め、そして自分たちでは意見を言えない幼い子どもの声を代弁することが大切となります。
 これまで海外において、子育ての分野にお金をかければ出生率が上がることは実証されています。保育所の整備や児童手当、育児休業給付などのわが国の家族関係社会支出は、国内総生産比で1.25%に過ぎません。スウェーデンは3.5%、フランスは2.9%です。どちらの国も、一度は少子化に直面したものの、その後合計特殊出生率を2.0程度に回復させています。巨額の債務がある日本の財政状況では、国の支出はこれ以上増やすことはできません。限られた税収の分配方法を変えるしかありません。他国と比べ日本は、高齢者への社会保障給付費が多いことが指摘されています。生活にゆとりがある高齢者に、負担してもらう政策を進める必要があります。
 わが国の少子化は、待ったなしの状況にあります。今決断しないと大変な事態を招きます。今回のブログは、匿名ではあるものの大きな波紋が広がったのは、ほとんどの国民の共感を呼んだからでしょう。

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