がんと妊孕性―Ⅶ

精子の凍結

 精子の凍結は、50年程前より開始され、現在でも人工授精の際にさかんに臨床応用されています。また若い男性の悪性腫瘍患者の治療に際しては、あらかじめ精液を採取し、凍結保存しておき、病気が治癒した後、融解して人工授精に使用されています。
精子凍結の積極的な適応となるのは、精巣摘除が行われて、精子形成の場である精細管が無くなる場合、放射線や抗がん治療によって精子形成が障害される場合、膀胱がんなどの手術により、精路閉塞が起こり、閉塞性無精子症や射精障害となる場合などがあげられます。保存期間は、患者本人が生存している間のみとされており、本人が死亡した場合は廃棄することになっています。小児がんの男児においても生存率は上昇し、近年では小児がん患者の80%以上が、がんを克服していると考えられています。若年男児で精液が採取でき、精子が凍結保存できる場合は問題ありません。しかしながら、精液を採取出来ない、思春期前の小児男児では、精子形成が未熟であり、精巣組織を採取し、凍結保存する方法が考えられていますが、現在は未だ研究の段階です。

(吉村 やすのり)

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