こんな医者になって

 重い心臓病を患う中学1年山田倫太郎君が、「医者になってお兄ちゃんを治す」と言い始めた4歳の弟に、自分の体験をもとにした「患者が望む理想の医者」をつづった。倫太郎君は左心室と右心室が分かれていないフォンタン術後症候群という14千人に1人の難病を抱える。今も腸からたんぱく質が漏れる合併症で点滴が欠かせない。

 今年の初め、弟の恵次郎君が人体図鑑を眺めて「お兄ちゃんを治したい」と言い始めた。それを聞いた倫太郎君が自分の体験談を元に一気に書き上げたという理想の医者像が素晴らしいのでぜひ紹介したい。たとえば、お昼ご飯のうどんがのびるとおいしくないから食べ終わってからエコー検査をしよう、と患者さんの都合に合わせて検査の時間を合わせてくれた先生。ペースメーカーの実物を2種類持ってきてわかりやすく説明し、機械を入れる不安を取り除いてくれた先生など・・・

 この8ヶ条には医師としてはもちろん、それ以前に人として大切なことが書いてあると思う。特に子どもは医師(大人)のことをよく見ている。ハッとさせられる内容ばかりだと思う。たくさんいる患者さんの1人として接するのではなく、どんなに忙しくても1人1人と真摯に向き合い治療を行っていく大切さを改めて感じた。医者になりたい、産婦人科医が素晴らしいと思った医学生の頃、無我夢中で患者さんに接していた頃を思い出した。初心に戻らせてくれた8ヶ条をぜひたくさんの医師に、大人に読んで頂きたいと思う。そして、弟の恵次郎君のような想いで医師を目指してくれる子どもが増える世の中になってくれることを願っている。


(2014年11月15日 朝日新聞夕刊)
(吉村 やすのり)

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