アルツハイマー病の診断

 アルツハイマー病患者の脳には、2つの異常が起きています。アミロイドβというたんぱく質が沈着してできる老人斑と、タウというたんぱく質が絡み合った糸くずのような神経原線維変化です。アミロイドもタウも、いわばたんぱく質のごみです。アミロイドとタウが脳に蓄積して神経細胞を死滅させ、脳が委縮して認知症になるのがアルツハイマー病です。タウたんぱく質がたまる領域は、アルツハイマー病患者の脳が委縮している領域とよく一致します。しかし、アミロイドβはそれほど一致しません。ただしアミロイドβは過剰にリン酸がくっついたタウたんぱく質を増やすので、治療にはその除去も必要と考えられています。
 がんなどの検査に使われる陽電子放射断層撮影装置(PET)を用いて、タウたんぱく質やアミロイドβを検出することにより、アルツハイマー病の早期診断に役立てています。放射線医学総合研究所(放医研)は新たにタウに結合する薬剤を開発し、これとアミロイドを検出する従来の薬剤を用いて、記憶障害がない正常な高齢者とアルツハイマー病患者の脳を調べています。脳の中の海馬という部位にタウがたまり始めている正常な高齢者が見つかりました。しかし、アミロイドはたまっていませんでした。放医研は、海馬に蓄積するタウを高感度で検出できるヘルメット型のPETを開発しています。これにより、タウがたまり始めたポイントを正確に捉え、治療を早期に開始しようとしています。

(2016年1月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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