エクソソ-ムの役割

 エクソソ-ムとは、生体内で細胞外に放出される直径約30100mmの超小型の膜小胞です。がん治療の最大の壁になっている進行や移転に、細胞が出すこのエクソソ-ムが密接にかかわっていることが明らかになっています。がん細胞が作る情報物質をほかの細胞に運び、増殖や移転につながる反応を引き起こします。そのため、がんの進行を抑える新たな治療法を開発する手掛かりになると考えられています。また、がん細胞が栄養を確保するために周囲に新たな血管を作る血管新生という現象に、エクソソ-ムが関与していることも明らかになっています。
 マウスに皮下注射したところ、注射した部分で血管新生が進むことが確認されています。エクソソ-ムの中に入っている遺伝情報物質のRNAである。小さな破片マイクロRNAが、血管の内側の細胞に作用し、血管新生を促しています。また、エクソソ-ムが、乳がんの脳転移 にかかわっていることが明らかにされています。エクソソ-ムは、1980年代からその存在は知られていましたが、単に細胞内で不要になった物質を細胞外に運び出す作用をもっているだけと考えられていました。2000年代後半に、遺伝情報物質やたんぱく質をほかの細胞に渡す、いわば情報の運び役となっていることが明らかになっています。

(2015年6月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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