ダイレクト・リプログラミング

 iPS細胞を介さずに、再生医療に使う神経や心臓の細胞を患者の皮膚の細胞から効率よく作る研究が脚光を浴びています。京都府立医科大学は、ヒトの皮膚細胞に特殊な化学物質を与え、8割以上の確立で神経細胞に似た細胞に分化させています。また、東京大学は、マウスの皮膚細胞へ遺伝子を導入し、心筋の細胞に分化させています。iPS細胞を培養する手間が省け、これまで数カ月かかるとされた治療の準備期間が、数週間に短縮できる可能性があるといわれています。 国内外で研究が進むこの技術は、ダイレクト・リプログラミングと呼ばれています。皮膚などから取った細胞の性質を化学物質や遺伝子で強引に書き換え、神経や肝臓といった別の細胞に分化させる技術です。
ヒトの皮膚の細胞に6種類の低分子化合物を与えて3週間培養し、最大で80%以上の確立で神経細胞のような細胞に分化させることに成功しました。また、胎児の背中にある線維芽細胞に4種類の遺伝子を入れて培養し、7日後には20%が心室筋の細胞に分化しました。このようなダイレクト・リプログラミングは、iPS細胞を使う手法と並んで再生医療を後押しすると期待されています。iPS細胞のように多分化能を有していませんが、目的の細胞をすぐに作り出せる利点は大きいとされています。

(2015年8月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

 

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