ヒト受精卵の遺伝子改変

 中国の研究グル-プが、病気治療への応用をめざし、世界で初めてヒトの受精卵の遺伝子を改変したと発表しました。生殖細胞の遺伝子に手を加えれば、その影響は子孫に受け継がれていることになり、倫理的問題が大きいと批判が出ています。ヒトの受精卵を使った遺伝子改変の報告例は、世界で初めと思われます。
 この研究では、不妊治療クリニックから提供を受けた86個の受精卵の遺伝子を改変しています。血液の病気の原因となるヘモグロビンベ-タ遺伝子変異を直すことを試みた研究です。分析できた54個の受精卵のうち、狙い通り改変されていたのは4個だけで、それらが分割した細胞には遺伝子が正常化していないものがあったとされています。研究成果は、英科学誌ネイチャ-や米科学誌サイエンス誌に投稿されましたが、いずれも倫理的な問題で却下されています。技術的には新しい画期的ともいえる方法ですが、目的外の遺伝情報にも改変が起きてしまうこともあり、科学的にもまだまだ未熟で、未完成な信頼性に欠ける論文です。いずれにしても、科学的にも倫理的にも問題が多い論文です。

(2015年5月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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