免疫拒絶を回避できるiPS細胞の作成

 京都大学iPS細胞研究所は、再生医療で使う治療用のiPS細胞を備蓄し、今秋から提供を始めることになりました。日本人で拒絶反応を起しにくいiPS細胞をつくり、病気やケガの時の移植に備えるものです。3年以内に日本人の35割をカバ-できることを目標としています。iPS細胞をあらかじめ神経の細胞に成長させ、事故やケガで脊髄が傷ついた患者に移植するなどの備えができ、直ちに治療に入れば、脊髄損傷などが治療可能になるかもしれません。臓器や神経の治療では、多くの細胞が必要になるだけに、安全性を確かめたiPS細胞を備蓄しておくことが大切になります。
 これまでの再生医療は、患者自身の細胞からiPS細胞を育て、傷んだ体の機能を取り出す計画が実施されています。本人のiPS細胞を使えば、拒絶反応は避けられますが、コストが高く移植までに半年以上かかってしまいます。理化学研究所が昨秋、目の難病治療の研究にかけた培養期間は10カ月で、費用は5000万~1億円ほどかかります。京大は日本赤十字社と協力し、特別なHLA型を持つ人を見つけました。この人からつくったiPS細胞は、日本人の約20%の人で拒絶反応を起こしにくいといわれています。さらに22年度末までに、ほかにもこのような日本人に合うHLA型の人を探していますが、すでに10人程度を絞り込み、数人から血液を採取し、3年以内に510人を突き止め、日本人の35割をカバ-することを計画しています。140人を特定すれば、日本人の9割に対応出来ることになります。

(2015年4月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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