再生医療の壁

 再生医療は、開発を加速する企業の急増や広がる産学連携で沸きたっています。わが国の数多くの企業が、再生医学や医療の研究開発に着手しています。しかし、開発が成功してもそれがゴ-ルではなく、多くの課題が山積しています。問題点は、治療の患者が限定されていることと費用対効果にあります。
 理化学研究所は昨年、目の網膜の細胞シ-トをiPS細胞を用いて作成し、加齢黄斑変性という難病に苦しむ70歳代の女性の片目に移植する臨床研究を開始しました。この研究のための費用は、実に一人の患者あたり5000万円を超えています。これを、公費で賄おうという論理も矛盾を生む事になります。厚生労働省は、再生医療製品を用いた医療は原則として保険を適用する方針としています。再生医療は機能不全となった臓器を交換する究極の医療で、それ故に潜在需要は限りなく、国際的な競争力を持つ日本の次世代産業としての期待も大きいものがあります。しかし実用化と産業化には大きな問題が立ちはだかっています。

(2015年4月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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