出生率と女性労働力率との関係

 OECD加盟国の約半数の国は、出生率1.8を超えています。2013年の出生率は、米国が1.86、フランスが1.99、スウェーデンが1.89です。一方、ドイツは1.40、イタリアは1.39と低出生率に悩んでいます。アジアをみると日本より出生率が低い国・地域も多くみられます。13年では韓国は1.19、台湾は1.07、シンガポールは1.19です。東南アジアでも、タイは1.4012年)と日本より低く、ベトナムも徐々に低下し1.8程度と推定されています。これら少子化の背景には、女性の就業と出産・育児を支援する仕組みが十分ではないことや若者の雇用が不安定なことがあげられます。
OECD30
カ国を対象に過去32年間の女性の労働力率と出生率の関係みると、女性の労働力率が低い国では多産化がみられ、出生率は高い傾向にあります。しかし、女性が活躍するにつれ、出生率は低くなります。一方、女性労働力率が高い国では出生率が上昇します。つまりこれらの国では、女性活躍と出生率の改善が同時に進行しています。このことは、女性が労働市場に一層進出するには、就業と育児の両立支援が不可欠であり、両立支援を拡充することで出生率が高まることにつながります。日本のように今後労働力人口が減少する社会では、さらなる女性の労働市場への進出が欠かせませんが、就業と育児の両立支援がなければ、それは困難となります。しかし、両立支援が充実すれば出生率も改善する見込みが高くなる可能性を示しています。
 就業と育児の両立支援のためには、家族関係社会支出を増額させることです。児童手当などの家族関係社会支出をみると、日本は国内総生産比で1.3%程度であり、フランス2.9%、スウェーデン3.6%と比べると極めて低く抑えられています。家族関係社会支出を増やすには、今後、高齢者から若者へ歳出の流れが変えることが必要となります。同時に消費税率引き上げによる子育て財源を確保すべきです。

(2016年1月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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