医療事故調査制度―Ⅲ

院内調査とセンタ-調査

 院内調査では、カルテなどの診療記録をチェックし、担当医や看護師らからヒアリングをするほか、必要に応じて解剖を実施したり血液や尿などの検査・分析をしたりします。この調査に対しては、各都道府県の医師会や関連学会などが支援することになっています。一方センタ-による調査は、院長などからの説明や必要な資料の提出を求めますが、新たな事実の調査というよりは、院内調査委の結果を医学的に検証するのが主な役割です。院内調査の報告書はセンタ-へ必ず提出されますが、遺族に対しては文書の提出は義務化されていません。センタ-による調査結果は、医療機関にも遺族にも報告書が渡されます。
制度の中心はあくまで院内調査に置かれています。それに対し、遺族側は病院側が内輪で都合が悪いことを隠すのではと懸念しています。ここで重要なのは客観性であり、院内調査にその病院との関係ない外部委員が参加しているのかが一つの判断材料になります。患者、国民の信頼に応えるため、公平性、中立性、透明性を担保しなければなりません。院内調査と第三者機関のセンタ-調査では、報告書の取扱いと患者負担も異なります。院内調査では、遺族の費用負担はありませんが、センタ-での調査では2万円かかります。

(2015年10月29日 朝日新聞)
(吉村 やすの)

 

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