医療費抑制政策

 内閣官房の専門調査会は、全国の病院のベッド数を20万人分減らすことを提言しています。高齢化への対応や医療費抑制を目的に、軽症の患者は病院から自宅や介護施設に移ってもらうことを目指しています。病院や診療所のベッドは、2013年時点で全国に135万床で、ここ20年ほどは緩やかな減少傾向が続いていますが、これをさらに減らそうとしています。今の制度のままだと、団塊の世代が75歳以上になる2025年には、152万床が必要になります。それにより、医師の数など十分な医療体制が提供できなくなる恐れがあり、医療費も膨らみます。このため病院の役割を見直し、手厚い医療を必要としていない30万~34万人については、自宅や介護施設での治療に切り替えようとしています。
 具体的には、重症患者を集中的に治療する高度急性期や急性期のベッドを減らします。急性期のベッドは医療費が膨らみがちですが、実際には回復した患者が入院し続けるケ-スもあります。ただ、政府の思惑通りに削減が進むかは不透明です。国はベッドの増設などを制限する権限はあるものの、すでにあるベッドの削減を強制することはできません。特に日本では、ベッド数の8割は民間病院が占めています。各病院の運営に直結するだけに、削減は容易でないことが予想されます。

(2015年7月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。