周産期医療―Ⅸ

さいごに

 医師・歯科医師・薬剤師調査によると、産婦人科医数は2006年以降微増を続けており、2012年までの6年間に全体として約800名の増加が認められています。しかし、男女比をみると男性については一貫して減少が続いており、この増加は女性医師の増加によるものです。また都道府県別に検討すると、東京、大阪、神奈川、名古屋、福岡という大都市圏5都道府県で500名前後の増加がみられていますが、山形、福島、栃木、群馬、山梨、鳥取、高知、長崎、熊本の9県では減少が認められています。若い女性医師の増加と男性医師の減少の結果としての微増であり、医師数の増加によって人員不足の状況が改善している可能性があるのは大都市圏に限定され、地域格差はむしろ拡大していると考えられます。
 産婦人科医、特に女性医師が分娩を取扱う周産期医療の現場から離れる傾向が指摘されています。日本産科婦人科学会によれば、15年目までの男性医師の分娩取扱施設勤務の割合は80%以上であったのに対し、女性医師では、6年から10年目で4割、11年から15年目で約半数が周産期の現場を離れています。35歳未満の医師のうち、女性医師が約7割を占める産婦人科においては、この問題への対策が急務とされ、女性医師の継続的就労を支援するために、院内保育園の整備や短時間正規雇用制度の導入など、医療機関側の施策の転換が求められます。

(吉村 やすのり)

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