妊娠率と生存率の受け止め方の違い

がんを患ったとき、医者から5年生存率という言葉を聞くことがあると思います。5年生存率が例えば80%と聞いた時、女性は10人いれば2人が亡くなり、自分がそれに当てはまるのではないかと大変心配します。命に関わることなので、当然のことだと思います。しかし、不妊症で病院に行った時、妊娠率が20%と医者から聞かさても、私は大丈夫!20%の中に入る!とお考えになる方が多いように思います。同じ20%と聞かされても受け止め方がまったく異なっており、これはとても不思議な現象です。

女性は元来いつでも妊娠できると思っておられます。これまでたくさんの患者さんを診させて頂きましたが、高齢になって初めて病院に来られても妊娠できないと考えている方は少ないように思います。妊娠できにくいのではと考えていても、自分は月経が正常であり、健康なのでいつか妊娠できると思っておられます。しかし、体外受精や顕微授精などの高度な生殖医療を行っても、40歳で赤ちゃんをお家に連れて帰れる割合(生産率)は、10人に1人です。45歳であれば、その値は100人に1人となります。大変厳しい現実ですが、この事実をカップルは真剣に受け止めなくてはなりません。

 こうした事実をこれまで若いカップルに教えてこなかったことは、産婦人科医として大変悔やまれます。遅きに失した感はありますが、現在一生懸命思春期の時から教育をするべく努力をしています。このたび、日本産科婦人科学会では、若い男女に教育をするための書として女と男のディクショナリーを発刊しました。思春期からの生殖に関する教育の重要性を感じる今日この頃です。

(吉村 やすのり)

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