子宮頸がんシリーズ―Ⅱ

子宮頸がん検診とワクチン予防
 HPVワクチンの積極的勧奨が控えられてから、マスコミでもワクチンが打てないなら、検診を受ければよいと報道されことがしばしばあります。しかし、結果として検診受診率はまったく向上せず、ワクチンの接種率は70%から1%未満に激減し、子宮頸がん予防の観点からは忌々しき事態に陥っています。確かに子宮頸がん検診は有効であり、1960年以降に多くの先進国で検診が広まったことにより、子宮頸がんの死亡率・罹患率は急激に減少しています。しかし、認識しておかなければならないことは、検診の目的はHPV感染の予防ではなく、前がん病変の発見により浸潤がんへの進行を防止することにあります。これに対し、HPVワクチンは前がん病変の発症を防ぐことに加え、HPV感染そのものも防ぐことができるということです。その結果、ワクチンを受ける人が多ければ多いほど、感染自体の拡大を抑えることができます。検診の場合は、検診を受けた女性にのみしか利益がありませんが、ワクチンの場合は、予防接種を受ける人々のみならず、接種を受けていない人や男性も集団免疫により感染を免れることができます。
 検診は子宮頸がんのみが対象ですが、HPVワクチンはそれに加えて、他のHPV関連疾患である 腟、外陰部、陰茎、咽頭、喉頭や肛門のがん、尖圭コンジローマ、再発呼吸器乳頭症から、男女ともに守ることができます。検診に伴う女性への負担も考えなければなりません。検診が導入されてから、子宮頸がんの罹患率や死亡率は減少していますが、検診や発見された病変の治療で女性が受ける身体的負担や精神的負担はまったく軽減していません。ワクチンを接種した女性であっても継続して検診を受けるべきですが、特にHPV検査が一次検診として行われる場合は、生涯における検診の回数は25歳から5年ごととされており、ワクチン未接種の女性よりも回数は少なくてすむことになります。

(吉村 やすのり)

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