子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種勧奨の延期

 わが国では子宮頸がん患者が増加し、年間約1万人が発症し、死亡者は約3000人に上っています。最近では特に2030歳代に増加しており、若い女性や子育て世代の女性が子宮頸がんに罹患し、妊孕性や命を失うことは深刻な問題です。WHOおよび国際産科婦人科連合(FIGO)は、最新の世界中のデ-タ解析結果に基づき、HPVワクチンの安全性と有効性を繰り返し確認し、HPVに起因するすべてのがんの予防のために、国のプロジェクトによるHPVワクチン接種を強く推奨しています。
 厚生労働省は、子宮頸がんワクチンの副反応問題で、患者の追跡調査結果を有識者検討会に報告しました。それによれば、186人が未回復の状態であるとし、深刻な副作用が残ると判断されました。これを受け、検討会は、20136月以降控えてきたワクチン接種の推奨について、再開の見送りを決めました。調査では、200912月のワクチン発売から201411月までに接種を受けた約338万人の女性のうち、何らかの症状が報告された2584人を追跡しました。経過が確認できたのは1739人です。副作用報告の頻度は、接種が推奨されている海外に比べて、各段に高いわけではありません。しかし、日本では比較的症状の重い患者が目立つことが指摘をされています。
 子宮頸がんの早期発見には、定期健診を受診することが重要です。ただし、予防にはつながらず、日本産科婦人科学会などは接種の意義を強く訴えています。子宮頸がんワクチンは、性交渉により男性から女性に原因ウイルスが感染するのを防ぐ効果が期待されています。豪州では、男女両方が定期接種の対象となっています。接種の呼びかけ中断が長引くことで、将来わが国の女性だけが子宮頸がんに罹りやすいといった状況にならないようにすることが大切です。何よりも若い女性が不利益を被らないような施策が必要となります。

(吉村 やすのり)

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