放射線被曝とがん発症リスク

 放射線はDNAを傷つけ、がんのリスクを上げる要因の一つになります。放射線被曝によるがんのリスクのデータは、広島・長崎の原爆被爆者ら12万人を対象に行われた調査が基本となっています。国際放射線保護委員会(ICRP)によると、人口当たりのがん死亡率は、100ミリシーベルトの被曝で0.5%増え、1000ミリシーベルトでは5%増え、線量に比例して上昇するとされています。しかし、100ミリシーベルトを下回る被曝での影響は明確に定められておりません。死亡率が増すとしてもわずかで、集団全体では運動不足や飲酒といった他の要因の方がはるかに影響が大きくなるためです。つまり、低線量の被曝をした人ががんになっても、それが放射線のせいなのかどうか見極めるのは難しいということです。
 100ミリシーベルトより、低い線量での影響は明確ではありませんが、飲酒などの影響はかなり明確に知られています。国立がんセンターによると、喫煙や毎日の飲酒は、がんになるリスクを1.6倍に高めます。これは1000~2000ミリシーベルトの被曝に相当します。肥満や運動不足もがんのリスクを約1.2倍高め、200~500ミリシーベルトの被曝に相当することになります。また、短期間に100ミリシーベルトを被曝した場合と、たとえば福島で年10ミリシーベルトずつ10年間浴びた場合で、健康影響が同じかどうかは解明されていません。100ミリシーベルトより低い線量でも影響がないとは言い切れないため、ICRPは影響があると仮定し、一般人が自然界や医療以外で被曝する放射線の許容量を、平常時は年1ミリシーベルト以下と勧告しています。

(2016年3月13日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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