日本創成会議提言に憶う―Ⅱ

高齢者地方移住

今回の提言は、少子化と人口減少が止まらず、存続が危ぶまれる全国896の市区町村を消滅可能性都市と指摘した、昨年の提言に次ぐものです。住み慣れた地域で在宅医療や介護サ-ビスを使って、高齢者が暮らす体制づくりは、東京圏では難しくなり、高齢者の地方移住を推進させようとする、大胆な発想です。これにより、地域の消費需要が増加し、雇用の拡大につながるとして、地方創生の改革効果が大きいと考えられています。
この提言は、移住先の候補地を医療と介護の余地の観点からも評価されています。医療は、車で1時間以内に行ける急性期病院の住民1人あたりの利用できるレベルを評価しています。介護については40年時点の介護需要を満たすかで判定し、41地域が余力のある地域に該当しています。しかし、医療を支える急性期病院が地方にあったとしても、その病院が一定の医療水準を確保しづつけることは極めて難しいことです。現在も施設はあったとしても、働く医師や看護師が不足しているために、地方の医療機関は閉鎖せざるを得ない状況にあります。地方に医療や介護の質を充実させる政策を考えない限り、この提言は意味のないものとなってしまいます。

(2015年6月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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