東日本大震災後の小児の心と体の発達―Ⅰ

肥満とアレルギー

 被災三県と他の都道府県を比べて、平成16年度生まれでは、過体重の状態にあるお子さんは、どちらも差がありません。しかし、平成18年度生まれの保育園で被災体験のある群を比べると、確かに4歳児健診の時から5歳児健診の中で、過体重の割合が有意に上昇しています。被災3県で、被災してから約半年後の体重は増えていると見ることができます。もう一つ、有意差が出たのは、アレルギー疾患です。アトピー性皮膚炎は、被災経験ありでは大体1.6倍、ぜんそくの場合は2.1倍ぐらいに罹患率が上昇しています。つまり被災3県では、他の地域に比べて震災6か月後の過体重の発症が有意に高値でした。さらにアトピー性皮膚炎とぜんそくの罹患率が有意に高かったという結論が得られています。
 被災3県と被災しなかった3県を比べてみると、岩手県で被災6か月後ぐらいの時に、体重が有意に増加しています。これは宮城県でも同じです。ただ、これは一過性で、1年過ぎるとこれは元に戻っています。しかし、福島県は6か月後にはBMIが上がるわけですが、それが1年半たった時点でもやはり高いままでした。震災後6か月たった被災3県の幼児のBMIは、一時的に上昇します。被災後は炭水化物の摂取が多くなり、食生活の影響と思われます。しかし、福島県においては、これは震災後持続的に体重が増加しています。特にそれが沿岸部しかみられないことを考え合わせると、原発の影響で外遊びができないということが、やはり大きいと考えられます。

(2016年5月1日 家族と健康)
(吉村 やすのり)

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