産婦人科の医師不足―Ⅲ

日本産婦人科学会の総力を上げての策が功を奏したからといって、今後も引き続き有効だとは思えない。どの診療科も医師の確保に努力しており、現在ではサマースクールはさまざまな診療科が行うようになっている。どんなに効果的な施策であっても4年も経過すれば効果が薄れてくる。実際、日本産婦人科学会への新入会員数は2010年の540人をピークに、2011年はまた500人を割ってしまった。2012年も500人に達しないのは確実である。この減少の原因の一つは、初期臨床研修が2010年度から見直されて、それまで必修だった産婦人科が、5科目のうち2科目を選ぶ選択必修科目の一つになったことで、研修を受ける人が減ったことである。それだからこそ、早急に新機軸を出していかないと、今後ますます産婦人科医が減少することになるだろう。

そうれなければ、10年後、15年後にまた同じように産婦人科医の不足という問題が再燃することになる。というのも、20~30歳代の産婦人科医は女性が主体である。女性医師の場合、結婚や出産を機に家庭にはいってしまうことが少なくない。どんなに働く意思があっても、現在のような過酷な勤務状況のなかで子育てをするのは難しいといえる。学会の新入会員の獲得と同時に、産婦人科医が働きやすい環境を整えることが喫緊の課題である。

例えば、ワークシェアリングは有効な手段だと思う。日本の場合、患者と医師は主治医制度に代表される、非情に特殊な関係にある。入院するとかならずその患者さんを担当する主治医がつく。外来診療であっても、みなさんは同じ医師に診てもらっているのではないだろうか。患者さん側も、外来のたびに医師が替わると不安になったり、同じ先生に診てもらいたいと希望することが多い。こうした主治医制度は、別の言い方をすれば、ある患者さんに対して個人の意思が責任をもつことになり、医療の存立を医師個人の力に頼っていることになる。もともと産婦人科医は当直が多く、看護師のように3交代とまでは言わないが、ワークシェアリングすることをもっと真剣に検討する時期にきていると思う。

最悪の産科医不足は脱したが、産婦人科を取り巻く環境にはまだ問題が山積みである。こうした問題を解決していかなくては、また再び危機的状況に襲われるであろう。

(吉村やすのり)

 

 

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