産婦人科の訴訟件数

 従来より産婦人科の訴訟件数は、他科に比べて圧倒的に多かった。わが国における分娩の安全神話により、国民に分娩は良好な経過を辿って当たり前との考え方が浸透していたために、正常を逸する事態が起こると訴訟されるケースが多かった。しかしながら、近年最高裁から供出されたデ-タ-によると、産婦人科訴訟件数(脳性麻痺事例だけではなく全ての訴訟数)は、全科のトレンドより著しく減少しています。訴訟件数は大野病院事件以降減少に転じ、その後産科医療補償制度が始まった2009年から3年で再び低下し始め(脳性麻痺が確立し申請され報告書を受け取るまでに数年間掛かる)、その傾向が続いています。
 特に産科医療補償制度は、産科医師のためだけではなく、脳性麻痺の患者家族のためでもあり、究極には社会のためのものです。医師の立場からだけでなく、患者家族の視点から事例を捉える努力も求められています。家族は、自分の児が脳性麻痺という悲しい結果に至った分娩に対し、金銭の保障のみを望んでいるのではなく、原因が何であったかを知りたいと考えています。似たような事例であれば、将来は何とか悪い結果を回避できるように医療を進歩させてほしいと願っています。

(吉村 やすのり)

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