産婦人科カウンセリングシリーズ-Ⅴ 羊水検査の結果で期待しない結果がでた時の対応は?

羊水検査において最も難しい対応は、クライエントにとって期待しない 結 果 が 出 た 時 で す 。 結 果 が 出 て か ら 妊 娠 22週 ま で に 結 論 を 出 す には、時間があまりありません。検査前に染色体異常は治療法がないことをあらかじめ十分に説明し、遺伝カウンセリングを行い、検査結果に対するカップルの考え方が決定できるようなサポートを実施することが必要となります。理想的には十分にカップルで相談の結果、どのような検査結果が出てもその結果への対応を決めているクライエントのみが検査を受けるべきであると思われます。母体年齢が高くなることは、妊娠率が低下することであり、特にARTにより妊娠したクライエントカップルにとって、胎児に異常が見られるから人工妊娠中絶を選択することが、将来にわたり子どものいない人生になるかもしれないことを十分に説明しておかなければなりません。この点は、羊水検査前に起こりうる合併症である流産や子宮内胎児死亡について説明する時にも同じことが言えます。
生まれてくる子は誰でも先天異常などの障害をもつ可能性があり、障害をもって生まれた場合でもさまざまな成長発育をする可能性のあることをクライエントに十分に説明し、理解を求めることが大切です。胎児がダウン症群などの染色体異常の診断を受けたクライエントとその家族に対しては、正確な情報を提供すると同時に、クライエントを精神的に支えるためのピアカウンセリングも重要となってきます。出産前におこなわれる遺伝学的検査においては、クライエントが遺伝子の変化に基づく疾患や病態、そして遺伝型を人の多様性として理解することが大切となります。そ し て 、 そ の 多 様 性 と 独 自 性 を 尊 重 す る 姿 勢 で 臨 む こ と が 大 切 で あ ることを、クライエントが理解できるようなカウンセリングが必要です。クライエントが夫婦で話し合った結果、人工妊娠中絶を選択することがあります。その際に人工妊娠中絶の術式が分娩の形式をとることが知られていないことが多く、妊娠初期に施行されるような麻酔下での子宮内容除去術と思っているクライエントも少なくありません。さらに、胎児の異常により人工妊娠中絶ができるという胎児条項は、日本では認められていないことも説明しておかなければなりません。

(吉村 やすのり)

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