着床前遺伝子スクリーニング(PGS)臨床研究の開始

日本産科婦人科学会倫理委員会は流産防止のためのPGSの臨床研究を実施するPGSに関する小委員会の計画案を承認しました。

小委員会での私の発言をご参考のため掲載致します。

PGSの実施に当たっては、医学的問題のみならず、倫理的、社会的な大きな問題を包含している。したがって、これまで日本産科婦人科学会はこの実施を認めてこなかった。しかし、一方で結婚年齢の上昇によってPGSの実施を希望する患者の数も増加し、さらに最近はより確実に診断できる新しい方法も開発されている。ART施設においてもPGSの必要性を認めるとの声もある。そこで倫理委員会としては、臨床研究として、まず科学的検証を行い、その科学的結果に基づいて、倫理的、社会的な問題を一般社会、世間に問うという態度で臨むことが望ましい。

これまでに真の意味での臨床研究は実施されていないと、私個人は考えている。NIPTを行った後の人工妊娠中絶などの成績、遺伝カウンセリングした結果としてNIPTを受けることを止めた人の割合も公表されていないなど、現在のNIPTは臨床研究とは言い難いところがある。今回の臨床研究は、PGSを実施することに科学的エビデンスが本当にあるのか、倫理的議論をする以前の問題として科学的検証を行う研究である。その結果に基づいて、倫理的、社会的問題点を議論する必要性を、世間に問うことを明確にしておく必要がある。したがって、現在の見解を変更せずに、科学的検証を行うのであると説明したほうが、世間の理解が得られやすいと思う。

(2014年11月26日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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