第三者を介する生殖補助医療について憶うこと―Ⅱ

代理懐胎は、配偶子の提供による生殖補助医療よりさらに多くの問題を含んでいます。代理出産を依頼するために日本から海外に渡る夫婦がいるという現実はありますが、とりわけ女性の身体を出産の道具に利用することには倫理的に大きな問題が残ります。妊娠した子どもに異常があった場合、中絶を強要したり、子どもを懐胎した女性に後遺症が残ったり、死亡したりすることもあります。今回の自民党の生殖補助医療に関する法律案でも、代理懐胎については結論は出さず、継続審議となっています。
 厚生労働省審議会の部会は2003年、代理出産を禁じ、卵子提供は一定の条件で認める報告書をまとめています。2008年には日本学術集会議が、代理出産を原則禁止とし、公的管理下での試行の道は残す報告書を出しています。だがいずれも、具体的な動きにはつながりませんでした。
民法は第三者がかかわる生殖補助医療で子どもが生まれることを想定していません。自民党内には、民法の特例法を定めて親子関係を明確にすべきだという動きがみられています。生殖補助医療への受け止め方は文化や価値観によって異なります。英国やフランスなど法制化した国でも、認める生殖補助医療の範囲など具体的な内容はさまざまです。一人ひとりの家族観や価値観がからむ問題だけに、日本でも多様な意見があります。望ましい制度づくりに向け、私たち一人ひとりが身近な問題として捉え、考えていかなければなりません。

(吉村 やすのり)

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