結婚の壁

 2014年の合計特殊出生率は、1.429年ぶりに低下し、このままではわが国の少子化は止まりません。主たる要因は、未婚化・晩婚化です。「結婚願望はあっても出会いが少なく、相手が見つからない」国は少子化対策として結婚支援にも踏み込もうとしています。合計特殊出生率は人口動向を示す指標の一つで、分岐点は2.07です。この水準を超えないと人口は増えません。日本は約40年下回っており、少子化は深刻です。3月に政府は、今後5年間で重点的に取り組む施策を少子化社会対策大綱にまとめています。大綱の策定は2004年、2010年に次ぎ3回目ですが、今回初めて結婚支援を盛り込んでいます。
 結婚するか否かは個人の選択であり、行政が介入すべきではないと避けてきました。しかし、少子化に歯止めがかからず、仕事と子育ての両立支援策の拡充などの対策だけでは不十分であるとし、方針を転換しました。2014年の婚姻件数は64万件で、戦後最低を記録しています。結婚したいと思う若い世代の支援を進める一方で、妊娠しやすい年齢など家族形成に必要な情報も提供していくことにしています。わが国の婚外子の割合が2%前後であることを考えれば、わが国の女性は結婚しないと出産しない状況にあります。結婚は出産への一歩ですが、少子化は結婚支援だけでは解決しません。キャリアと子育てを両立しにくい環境が、女性の未婚化・晩婚化を促しています。

(2015年6月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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