総合診療医とは

 家庭医や総合医と呼ばれるゼネラリストを育てる試みは、90年代から始まっています。背景には、医療の専門分野化に伴って特定の病気や臓器に詳しい専門医が増え、地域に根ざした医療の担い手が足りなくなったという事情があります。患者の立場からみれば、専門医は頼もしい存在です。しかし、今後の医療のあり方を考えると、専門医だけが増えるのを単純に喜べない状況があります。高齢化が進む中、国は医療の場を病院から在宅へとシフトさせようとしています。在宅医療の患者の多くは複数の慢性疾患を抱える高齢者で、得意分野しか診られない医師では診ることはできません。
 在宅医療が広がれば、診療、検査、投薬の重複などむだな医療費を抑えることができるとの期待もあります。こうした家庭医や総合医の確保は国にとって重要な課題であり、関係学会と連動した取組が進んでいます。2010年、家庭医や総合医関連の3つ学会が合併し、日本プライマリ・ケア連合学会を結成しました。13年には、幅広い分野を診る能力がある総合診療医が、新たに専門医の基本領域となりました。専門医認定制度は、17年度から第三者機関による統一的・中立的な仕組みに変わる予定で、この中で育成を目指しています。

(2015年4月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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