腹腔鏡下手術とは-Ⅱ

腹腔鏡下手術のメリットとデメリット

 1520センチほどおなかを切る開腹手術に比べて、腹腔鏡手術では傷口を小さくできるため、手術後の回復が早い利点があります。傷口を小さくできるほかに、出血量が比較的少ない点もあげられます。術後の癒着などの合併症のリスクを減らすことができ、回復も早く、患者の負担は大幅に軽減できます。また、手術室のスタッフが、全員同じ画像を見られるのも利点です。新人医師の指導にも効果的なほか、多くの人が監視するためミスの防止につながります。
 だが欠点もあります。視野が狭いモニタ-も見ながら手術するため、手術時間は開腹よりも長くなりがちです。腹腔全体をみることが難しく、がんなどでは取り残しなどのリスクも高くなります。開腹すれば手で幹部に触れて得られる情報が、内視鏡ではわからず、判断が難しい場合もあります。1990年代以降に医療現場に広がった内視鏡による手術は、開腹手術に比べて歴史が浅く、まだ発展途上の段階にあります。高い操作技術やスタッフを含めた十分な実施管理体制が不可欠ですが、医師や医療機関によって技量や体制に差があるのも事実です。鉗子やメスなどの医療器具が高価なため、コスト面も違います。開腹に比べて内視鏡を使うと技術代などが増加しやすく、患者にとって治療費アップにつながっています。

(2015年7月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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