被災3県の医療事情

 東日本大震災の津波の影響で被害を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸と東京電力福島第一原子力発電所事故で避難指示区域では、医療過疎が深刻化しています。これらの地域では、震災前から医師不足が指摘されていましたが、医療過疎の進行に歯止めはかかっておらず、復興の妨げになっています。医科と歯科の診療所数は、県別では、福島県が震災前の約25%に当たる176施設が休廃止しています。岩手県は約11%の24施設、宮城県は約6%の59施設が休廃止しています。医療や介護の現場で人手不足が続いており、入院できる病院のベット数が減り、地元で必要な医療を受けられないケースも出てきています。稼働病床の減少の背景には、医師や看護師、薬剤師やリハビリなどの医療スタッフの不足がありあります。医療の縮小が続けば、避難や一時的に転居した住民が地元に戻れないことの要因にもなります。
 被災3県の高齢化はさらに進み、それに伴う要介護・要支援認定者数も増加しています。全国的な問題となっている介護人材不足は被災3県でも顕著です。一般的に要介護認定を受ける人が増えたり、介護サービスを使う人が増えたりすると、保険料は高くなります。期間困難区域に住んでいた人などには、保険料や利用者負担を減免する特例措置がありますが、今後、特例がなくなった時に払えない人が急増する可能性もあります。

(2016年3月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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