高齢者医療の肩代わり

高齢者医療費を現役世代が負担する仕組みを2015年度から見直すことになり、大企業で働くサラリーマンの社会保険料と税の負担が、4月以降重くなります。医療保険制度は、職業や会社によって入る保険が3つに分かれています。このうち、自営業者らの国民健康保健と中小企業会社員の協会けんぽは財政難であり、税金の補助を受けています。一方、大企業会社員の健康保険組合は、税金の補助はありません。大企業の社員は若い人が多く、病気で病院にかかる人も少なく、健康保険組合にはある程度余裕があります。

 75歳以上が入る後期高齢者の医療費は年間15.6兆円であり、全体の約4割にあたる6兆円を現役世代が負担しています。このための拠出金は毎年そのように増え、各健保の財政を圧迫する要因となっています。現役世代の拠出金はかつて、それぞれの健保に対して加入者の数に応じて割り振ってきました。しかし高齢者医療費が膨らむにつれて、加入者の平均年収の低い健保が、負担に耐え切れなくなってきています。政府は2015年度から2017年度にかけて、現役世代の負担分を、すべて加入者の収入総額に応じて各健保に割り振る仕組みに変えようとしています。そのため平均年収の高い企業の健保の負担が重くなることになり、このままでは企業は社会保障の負担増に耐え切れなくなります。これ以上保険組合への負担増は難しくなり、高齢者の医療費の負担を上げたり、医療費を抑制することが急務です。

(2015年1月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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