代理懐胎で生まれた子の母は

 自民党で生殖補助医療に関するプロジェクトチ-ム(PT)が、民法特別法案を今国会に提出しようとしています。精子提供や卵子提供については、親子関係について言及し、卵子提供による体外受精で生まれた子の母は、分娩した女性を母とすることにしています。また、精子提供による人工授精(AID)や体外受精では、同意した夫が父となり、嫡出否認はできないことになっています。しかし今回の法案では、代理懐胎については是非を含めて結論を出さず、継続審議になっています。
これまでの代理懐胎の論議においては、産んだ女性を母とすることになっていました。遺伝的には依頼者夫婦の子どもであっても、代理懐胎した女性が子どもを産んでいるからです。代理懐胎によって生まれた赤ちゃんが異常であるからとの理由で、依頼夫婦に引き取りを拒まれても、産んだ人を母としておけば、子どもの育ててもらう権利は守られることになります。日本学術会議で代理懐胎のことを検討した際にも、産んだ女性が母としています。産んだ女性が母親とする法律は、米国や英国、ドイツにもあります。この場合は、子どもが生まれた後に養子縁組をすることになります。
代理出産を認める米国の一部の州では、出産前に契約内容などを裁判所に確認してもらえば、生まれた時点で依頼夫婦が法的に親と認められています。英国では、産んだ女性の同意などの条件を満たせば、依頼者夫婦の子どもとして、裁判所が認めることができます。これまで、日本産科婦人科学会は会員向けのル-ルで代理懐胎を認めていません。自民党は限定的に代理出産を認める法案の検討を続けていますが、代理懐胎については反対意見も根強く、親子関係も含め国会での審議が必要となります。

(2015年7月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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