卵子の凍結-Ⅱ

 ガラス化法の登場で、卵子凍結・融解後の生存率は大きく改善しました。従来の方法よりガラス化法のほうが生存率は高いと報告されています。ガラス化法で凍結後に融解した卵子を使った顕微授精で、染色体異常の割合が有意に高いという報告はみられていません。現在では、最善の凍結法と言えます。しかし、これまで実施されてきた胚の凍結に比べると、その妊娠成績は十分とは言えません。
 凍結と保存がうまくいっても、必ずしも妊娠できるとは限りません。妊娠を確実にするには、20歳代の保存では10個、40歳代からでは100個の凍結卵子が必要になると考えて頂いて結構です。採卵時の初期費用100万円程度です。年間11万円の保管料もかかるのが一般的です。どの施設もまだ卵子の長期保存の経験はありません。体外受精や顕微授精の費用も別途かかります。卵子は凍結できても、母体の加齢は止められません。40歳以上では出産に関するリスクが高くなります。単に出産を遅らせるために健康な女性が用いるのはお勧めできません。

(2015年8月1日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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