卵巣組織の凍結保存と移植―Ⅲ

対象

 卵巣組織凍結の対象年齢は、その上限は3540歳前後までとされています。原子卵胞の数が多ければ多いほど移植後の妊娠・出産の可能性が高くなるため、小児から30歳までの小児・若年がん患者が、最も良い適応であると考えられています。採卵を必要としないことから小児にも施行可能であり、小児においては唯一の妊孕性温存方法となります。近年小児がん患者の卵巣組織凍結も積極的に行われていて、デンマ-クの報告では、対象患者の18%が14歳以下となっています。10歳の鎌状赤血球症患者の片側卵巣を摘出し、造血幹細胞移植後の13歳時に卵巣組織移植を行った結果、移植8ケ月後に初経を認めることができたとの報告があります。
 また、小児がん患者の卵巣組織凍結の下限適応年齢をこれまでの3歳ではなく1歳以上とし、場合によってはそれ以下でも可能であるとする報告もあります。2014年には、13歳で卵巣組織凍結保存を行い、造血幹細胞移植後に早発閉経となった鎌状赤血球症患者に対し、23歳で卵巣組織移植を行い、翌年妊娠した症例が報告されています。

(吉村 やすのり)

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