環境によるヒトへの影響―Ⅳ

DOHaD仮説

 メタボリックシンドロ-ムや生活習慣病の発症リスクは低出生体重児で高いのですが、2500g以上で出生した場合においても、より少ない出生体重の児ほど高率でした。また巨大児でも低出生体重児同様にそのリスクが高いことが判明しました。されに、早産児においてもそのリスクが指摘されるようになり、胎児プログラミング仮説だけでこのような状況を説明するのは困難であると考えられるようになってきました。2006年にGluckman Hansonは、発達期にある個体ではその置かれた環境の変化に対応するために発達期に可塑性を持つことを提唱しています。すなわちこの可塑性は発達が完了した時期の環境と適合すれば健康を維持できますが、適合しなければ成人期になってさまざまな病気に原因になるというDOHaDDevelopmental Origins of Health and Disease)仮説を提唱しています。胎児期の環境はもともと厳しい環境にありますが、出生後の環境が良いとかえって生活習慣病のリスクとなります。一方、出生後の環境が胎児期と同じように相対的に不良な環境であれば、生活習慣病のリスクにならないとする説です。
 環境によるヒトへの影響は、遺伝子そのものではなく遺伝子の発現を調整する機構(エピジェネティック)の変化を起こします。この影響は出生直後に出現するとは限らず、成人期になってあらわれます。また、親から子へそして生殖細胞を介して第3世代まで伝達されることが特徴です。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。