妊孕性に関する教育

 厚生労働省の研究班は、高校生や大学生に不妊や出産に対する正しい知識を持ってもらうために、教育用DVDを製作しました。研究班の調査では、30歳を過ぎると妊娠する能力が衰えていくことを知っていた高校生は、2割前後にとどまっています。若者向けに不妊を解説した副教材は少なく、今後高校や大学にDVDを配布する考えです。不妊について詳しく説明している高校生の保健体育の教科書は、少ないのが現状です。国の少子化対策でも、妊娠に関する教育の充実が指摘されています。著名人の高齢出産や不妊治療技術が進歩しているイメ-ジが先行し、妊娠に対して正しい認識を持っている学生が少ないのが現状です。
 女性には、残念ながら生殖年齢の適齢期があります。それは25歳~35歳です。現在のような晩婚化の状況では、子どもを希望しても持てなくなってしまいます。この事実は女性のみならず男性も知っておくべきことです。こうした男女の体のしくみの差異を、わが国の少子化問題と関連して論ずると、差別として誤解されることがあります。今回の研究でも、高校生や大学生に対する教育が十分でないことが明らかにされています。子どもを持つ、持たないは、あくまでも本人の選択です。しかし、それを知らされていなかったことにより、後に不利益を被る人がでてくるのは、われわれ教育者側の責任です。
 現在わが国では、通常の性生活をしても、2年ではなくて1年以上妊娠できない場合を不妊と呼ぶことになりました。

(2015年12月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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