性同一性障害に憶う

 性同一性障害者に対して、20037月に性同一性障害者特例法が成立しました。これにより、性同一性障害患者のうち特定の要件を満たす者につき、家庭裁判所の審判により、法例上の性別の取り扱いと戸籍上の性別記載を変更できることになりました。性同一性障害を有する者は、これまで男性3万人に1人、女性10万人に1人の割合と推計されてきましたが、こうした法律の制定や社会認識の変化により、カミングアウトするケースが多くなり、その頻度は増加してきております。その増加に伴い、様々な場所でその対応が問題視されてきています。特に拘置所や刑務所では、性同一性障害がある人たちにどのように対応するかが問題となっています。
 この特例法の制定により、婚姻も可能となり、性別の取り扱いの変更の審判を受けて男性となった者は、法的にも認められた夫婦となり、精子の提供を受けて人工授精(AID)により、子どもをつくることも可能となりました。下級審では性別を女性から男性について、AIDにより妻との間にもうけた子は嫡出子として認められませんでしたが、2013年12月に最高裁は法律上の子として認める判断を下しています。LGBTなどの性的少数者に対する社会の対応は変化してきていますが、適切に対処できる専門知識のある医師も多くありません。性同一性障害で男性から女性になった者に対して、収容先の東京拘置所が女性ホルモンの投与を拒んだなどといった事例もみられます。法務省は、個別の事案は答えられないとしていますが、性的少数者に対する配慮が必要となります。

(2016年2月10日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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