低出生体重児―Ⅱ

病気とリスク

 厚生労働省は低出生体重児の増加に歯止めをかけるためのガイドラインを公表しています。妊娠中の体重増加についてBMIでやせ形の人は912キログラム、普通は712キログラムを推奨し、肥満の人については個別対応としています。妊婦の生活習慣による出生時の体重に与える影響も明らかになってきています。環境物質による子どもの影響を調べるエコチル調査によれば、約1万人の妊婦を調べたところ、妊娠中にたばこを吸い続けた母親から生まれた赤ちゃんは、吸わない妊婦と比較して出生時体重が平均100グラム以上少ないことが明らかにされています。妊娠中の喫煙が胎児の酸素や栄養の供給を減らし、成長を阻害するために体重が減少したとみられます。
 低体重で生まれた赤ちゃんは、将来病気になるリスクが高まります。この考え方は、DOHaD説(生活習慣病胎児期発症起源説)と呼ばれています。胎児期に充分な栄養が与えられないと、遺伝子が栄養をできるだけ体内で維持しようとする倹約型になってしまい、出生後に肥満を始めとする生活習慣病になりやすいと言われています。最近は動物実験などから、遺伝子の働きが変わるエピジェネティクスが関わっている可能性が指摘されています。

(2016年3月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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