子宮頸がんシリーズ―Ⅰ

子宮頸がんの予防
 子宮頸がん死亡率は、先進国はもとより、近隣の韓国、オーストラリア、ニュージーランドで低下しつつありますが、日本では最近になって上昇傾向にあります。特に性成熟期の女性の子宮頸がん死亡率の増加がみられます。子宮頸がんの原因がヒトパピロ―マウイルス(HPV)感染であることは明らかであり、日本の一般女性におけるHPV感染の頻度は、予想以上に高いことも判明しています。
 欧米先進国では子宮頸がん撲滅に向けて新しい取り組みが始まっており、HPVワクチンの定期接種とHPV検査の子宮頸がん検診が導入されています。日本においては、HPVワクチンは接種されておらず、子宮頸がん検診受診率は低いままであり、HPVDNA検査のがん検診への導入は進んでいません。予防が可能である子宮頸がんによる死亡率の増加は社会問題であることを、国民はしっかり認識すべきです。
 日本の子宮頸がん罹患率は、3040歳代で最も高く、この年齢層で死亡率も高くなっています。HPV感染からがん発生までの期間を考慮すると、2030歳代の女性の検診受診率と検査の精度を上げることは、子宮頸がん死亡率の増加を食い止めるために有効な手段と考えられます。一方、HPV1618型感染予防ワクチンは、検診を受けない、受けたくても受けられない、あるいは検診でがんが見逃されるかもしれない女性を守るという点で重要な意義があります。特に2030歳代に発生する子宮頸がんに対する予防効果は、極めて大きいものがあると思われます。若い女性が、がん治療によって妊孕性を失わないという観点からもワクチン接種は重要です。

(吉村 やすのり)

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