全国86の国立大学の40歳未満の若手教員では、5年程度の任期付きの雇用が急増しています。2016年度は63%に達しています。こうした傾向は、2004年度の国立大学の法人化後に強まっています。教員給与にあてる国の運営費交付金が減り、特定の研究ごとに若手を雇う例が増えたためです。任期付きの若手は増え続け、2016年度は、約1万7千人のうち約1万1千人で若手全体の63%を占めています。国立大学では、任期付き教員は2007年度の約1万5千人から2016年度は約2万4千人に増加しており、全体に占める割合は25%から37%に上がりました。
国立大学は、任期なしの教員の人件費は国からの運営費交付金に頼っています。国立大学の法人化後、厳しい財政状況を背景に運営費交付金は約1500億円削減され、多くの国立大学が任期なしの若手教員の新規雇用を抑制しています。代わりに、特定研究ごとに支給される科学研究費補助金などで任期付き教員を雇う傾向が強まっています。基礎研究は、10年以上かけないと成果が出ないこともあります。研究者を育てるためには、国の財政支援など落ち着いて研究できる環境作りが大切です。
(2016年11月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)