高齢者のがん治療

 国立がん研究センターの調査によれば、高齢になるほど、がんの積極的な治療を差し控える割合が増えることが明らかになりました。体力などを考えると、全ての高齢者に通常の治療法が最適とはいえない状況にあります。進行がんの場合、抗がん剤などの化学療法が中心となりますが、吐き気や倦怠感などの副作用も強く、患者の体力が問題になります。そのため、心臓病や脳卒中などを抱えることが多い高齢者は、体の負担が大きい治療を避け、苦痛を和らげる治療を受けながら経過をみる傾向が増えてきています。
 転移がある進行胃がんで治療を行わない割合は40~64歳では8.5%でしたが、75~84歳は24.8%、85歳以上では56%に上っています。他の進行がんも年齢が上がるごとに治療なしの割合が増えています。ステージ4の進行性大腸がんに対する治療法でも、85歳以上では手術療法のみや治療なしが増えています。患者自身の意思や体力などを、周りが十分考慮せずに治療が進められることがあります。患者と家族の意思、様々な状況を整理した上で、患者に最善と思われる治療法を決めることが大切です。

 

(2017年10月29日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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