脳内に薬剤を送る新しい技術

 注射した薬剤は血流に乗って全身を巡ります。脳に異物が侵入するのを防ぐための「血液脳関門」によって遮断されてしまいます。血液脳関門とは、脳の動きに大切な神経細胞を有毒物質から守るバリア-機能です。脳以外の毛細血管では、内部にある細胞同士の間に大きな隙間があり、大きな分子も通ります。一方、脳の毛細血管は内側の細胞がぎっしり並んで隙間がなく、入り込むことができません。しかし、脳にとって必要な物質は、血管の内側の細胞を通り抜けて中に入ることができます。
 現在、脳の病気を治療するため、届きにくい脳の内部に的確に治療薬を運ぶ技術の開発が進められています。名古屋大学や東京大学はそれぞれ、脳に異物が侵入するのを防ぐバリア-を通り抜ける技術を開発しています。神戸学院大学は、鼻の神経という別の経路を伝って脳に薬剤を送り込む方法を考えています。これらの新しい技術を用いることにより、アルツハイマ-型認知症や脳腫瘍などで治療効果が高まると考えられ、実用化に向けた研究がなされています。

(2015年4月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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