卵子提供報道について憶うこと

性染色体異常(ターナー症候群など)により自己の卵子で妊娠できない女性に対し、NPO法人「卵子提供登録支援団体」が卵子提供を仲介してすることになった。これまで一部医療機関において、姉妹や友人からの卵子提供により子どもは誕生している。厚生労働省の審議会は2003年に卵子提供などの生殖補助医療に関し、報告書をまとめているが、いまだ親子関係を含めた法整備は手つかずのままである。早期の法整備は急務である。また、ドナーには少なからず身体的リスクを負わせることになることから、ドナーとなる人に対する医療補償についてももう少し厳密な制度を確立しなければならない。

卵子提供を希望し、かつ医学的適応もあるクライエント夫婦が一定数存在すること、提供者に対しても対価が支払われないことを考慮すれば、今回は三人のドナーが選ばれたが、医療機関において匿名の第三者のドナーを確保することは極めて困難となることが予想される。卵子提供のリスクを十分に認識したうえで実施するのであれば、血縁者や友人からの卵子提供の道を閉ざさないことも必要であるかもしれない。しかしながら、自らの意思によることなく、その出生のあり方が規定される子の利益は、十分に保護されなければならない。しかも姉妹からの卵子提供においては、生まれた子どもの身近に遺伝的母親が存在することになり、家族関係が大変複雑化する可能性がある。また生まれた子どもに何らかの障害があった場合、クライエント夫婦はその子どもを享受するであろうか、提供者の心理的苦痛はいかばかりのものかは計り知ることはできない。この際最も大切なことは、生まれてくる子の保護と人間的尊厳性を守ることを第一義に考えることである。

(吉村やすのり)

 

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